ニュース: 2018年8月

Pre-Exercise Nutrition (2018年08月25日)

定期的にトレーニングする人にとって毎回のトレーニング効果を最大化するための栄養摂取法は大きなテーマの一つですよね。

今日のブログではどのタイミングでどんな栄養素を摂取するのが良いのか?そのヒントを探るべく、データをまとめてみました。

持久系エクササイズや代謝に対する多量栄養素と加工炭水化物の役割

持久系アスリートはまれに断食状態で競技に参加する。
従ってプレエクササイズミールの構成や摂取タイミングは、適切な代謝や持久系パフォーマンスに重大な影響を与える。持久系エクササイズ前の炭水化物の摂取によって脂質酸化やインスリンレベルが上昇するにもかかわらず、パフォーマンスレベルの向上が観察される。それらの代謝効果は、エクササイズ前によって加工でん粉および低グリセミック指数炭水化物を消費することで減弱する。
高脂質食は有益に見える(脂質酸化の上昇や筋グリコーゲンの節約)が、直接パフォーマンスの向上につながるわけではない。いくつかの研究ではエクササイズ前の高たんぱく食の効果が調査され、エクササイズ時の代謝に有益でありエクササイズ前のグリコーゲン合成が上昇することを発見した。
持久系パフォーマンスのための最上のプレエクササイズ栄養戦略の確立にはさらなる研究が必要である。

最高の持久系パフォーマンスのためには栄養摂取を熟慮する必要がある。
ここ50年で蓄積されたリサーチが示している最も有益な栄養学的介入は、HIIT及びレース後半に向けて炭水化物(CHO)燃料庫(筋および肝臓グリコーゲン)を増加し維持することである。
競技前数時間に食事を済ませるのはグリコーゲン貯蔵を最大化し、競技時のグリコーゲン利用を潜在的に高める一つの方法である。

高炭水化物食

競技前のCHO摂取は、近年議論の的であった(Jeukendrup AE,ら2010)。
CHOの消費は血糖値をかなり上げる(Coyle EF,ら1985)。結果的に膵臓からインスリンが放出され(Ahlborg Gら 1976)、肝臓のグルコース産出を鈍らせる(Marmy-Conus Nら1985)。イスリンは筋のシグナル経路を惹起し、グルコーストランスポーター4(GLUT4)を転移させて筋細胞にグルコースを取り込ませる(DeFronzo RA 1983)。
筋におけるグルコースの可用性の上昇は解糖系を刺激し、グルコース酸化を促進する(Costill DL,ら1977)。
同時に、インスリンは脂質酸化を減弱させる(Coyle EFら1985)。この基質利用の転換は、遊離脂肪酸(FFA)を減少させるインスリン介在性脂肪分解の抑制が見られることで説明がつくだろう(Horowitz JFら1997)。
グルコースの取り込みの増加や酸化は細胞内FFA濃度が高濃度でも脂質酸化を鈍らせ(Coyle EFら1997)、その結果ミトコンドリアへのFFAの輸送量を減らしてしまうだろう(McGarry JDら1977)。

エクササイズ前(最高で6時間前)のCHO摂取は、運動誘発性GLUT4転移に伴う高インスリン血症を誘発(Douen AG,ら1990)して血糖濃度を減少させ、人によっては運動誘発性低血糖の原因となる(Coyle EFら1985)。またいくつかの研究では、グリコーゲン分解も観察された(Fielding RAら1987)。
これら複数の影響は、エクササイズ後半のCHO利用の減少の結果生じることを示している。
しかし多くの研究では、運動前のCHOの摂取がパフォーマンスにネガティブな結果を与えたり、逆にパフォーマンスを高めるという結論を出していない。

高脂肪食

持久系パフォーマンスにおける内在性CHO貯蔵庫の重要性が立証され、近年の研究ではエクササイズ時の基質利用の操作を通じて、パフォーマンスを適切化する栄養理論およびトレーニング方法が考察されてきた。この多くの研究の根底にある概念は、持久系パフォーマンスを最大限改善するため、脂質酸化の適応力の適切化と内在性CHO貯蔵の最大化の間の正確な相互作用を立証するために多量栄養素マニピュレーションを用いることである。
持久系トレーニングでは亜最大運動負荷時に酸化脂質の代謝容量の増加が確認されたことから(Holloszy JOら 1984)、持久系アスリートのパフォーマンス向上には、代替燃料源としてCHO(すなわち脂肪)の有効活用が効果的であろう。

運動前の高脂肪食の摂取は基質供給に変化をもたらし、血中の遊離脂肪酸レベルを上昇させる(Whitley HAら1985)。遊離脂肪酸の上昇はエクササイズ時の脂質代謝を上昇させ(Goedecke JHら1999)て内在性CHO貯蔵を維持し(Costill DLら1977)、CHO枯渇率の速度を減少させる(Goedecke JHら1999)。

ヒトと動物(Hammel EP,ら1977)にヘパリンを投与(Costill DL,1977)したところ脂肪可用性が増大し、その結果アスリートパフォーマンスが著しく改善したという研究結果もあり、高脂肪食の摂取がその後のアスリートパフォーマンスに与える影響はあいまいなままである。

タンパク質と炭水化物の混合食

近年エクササイズ時またはエクササイズ後に、CHO飲料にプロテイン(PRO)を加えたものを摂取した際の影響について多くの研究が行われてきた。いくつかのデータでは、エクササイズ中のCHO単体での摂取に比べCHO-PROの摂取のほうがTTE(time to exhaustion)とTT(Time trial)パフォーマンスが向上することが示された。

加えて、トレーニング後のCHO-PRO摂取もその後のTTE(Berardi JMら2008)とTTパフォーマンスを向上させること(Ferguson-Stegall Lら2010)がいくつかの研究で明らかになったが、これはおそらくグリコーゲン再合成によるものと考えられる(Berardi JM2006)。
こういったデータがあるにもかかわらず、トレーニング前のCHO-PRO摂取の影響を調査したデータはごくわずかである。

エクササイズ前のCHO-PRO摂取の臨床的意義を評価する研究は、CHO-PRO摂取が代謝に与える影響をはっきりさせるのに有用である。
興味深いことに、CHO単体よりもCHOにPROを加えたほうが血糖反応が弱くなる(Roberts S,ら2013)。この作用は、血中の特定のアミノ酸レベルが上昇することに起因するタンパク誘発性ホルモン変化として部分的に説明できる(Claessens M,ら2009)。具体的にはアルギニンの増加し、ロイシンとフェニルアラニンが膵臓のα細胞とβ細胞を刺激することでインスリンとグルカゴンの両方を分泌する(Kabadi UM 1991)。

PRO誘発性グルカゴン応答はCHO摂取によるものと異なり、摂取後のインスリン上昇は独特の様態である。なぜならインスリンがグルコースとアミノ酸の上昇に反応しているように見えるからである(Roberts S,ら2013)。

インスリンを経由したそれらのホルモン上昇による影響は、グルコース処理を早める(Manders RJ 2005)と同時に、グルカゴンを経由して肝臓のグルコース産出を刺激する(Jiang G 2003)。それによって正常血糖値を維持しているのである。
CHO-PRO摂取による高インスリンレベルによって、FFAへの酸化作用がCHO単体摂取に比べて減少することも特筆すべきである(Horowitz JF,1997)。しかしこの作用はグルカゴンの潜在的な脂肪分解作用によって部分的に平衡が保たれている(Perea A1995)。

運動性低血糖からの潜在的な保護と並行して、CHO-PRO摂取はエクササイズ後の燃料貯蔵も高める。齧歯動物におけるいくつかの研究では、エクササイズ前のPRO摂取がグリコーゲン合成を高め(Morifuji M,ら2009)、エクササイズ時のグリコーゲン使用を節約することが示された(Morifuji Mら2011)。
エクササイズ後のグリコーゲン合成の増加を示すエビデンスとこの齧歯動物の研究結果を合わせて考察すると、エクササイズ前のPRO-CHO摂取が運動前のグリコーゲン貯蔵を増加させるよに見える。しかし、エクササイズ前のPRO=CHO摂取はグリコーゲン貯蔵の節約および増加によってヒトにおける運動パフォーマンスや運動キャパシティを向上させるように思えるが、それを証明するデータはごくわずかである(Rowlands DSら2002)。

タンパク質

PRO食が持久系エクササイズの代謝とパフォーマンスに与える影響を調べた研究は今のところ一つしかない(Rowlands DSら 2002)。
Rowlands と Hopkinsは自転車選手に対して運動前(90分)に(1)CHO (2)PRO (3)HIGH FAT の食事を与え、エクササイズ後半のTTとスプリントパフォーマンス(二時間のサイクリングの後)に与える影響を測定した(Rowlands DSら2002)。
その結果、パフォーマンスに相違は見られなかったが代謝では明白な違いが観察された。
特にCHO食はインスリン値を高めて、FFA酸化レベルを大幅に減少させた。この結果はPRO-CHO摂取のデータと照らし合わせると意外な結果であった(Betts JA, 2008)。
この研究ではソイプロテインが使用されたため、他のプロテインタイプに比べてインスリン応答を高めた可能性も否定できない(Claessens M,ら2008)。
おそらくWHEY PROを用いたらインスリン応答はより大きなものになり、グリコーゲン貯蔵や運動時代謝を高めるだろう。
さらに注目したいのは、この研究で被験者はエクササイス中にCHOを摂取したことである。

まとめ

持久系トレーニング数時間前の高CHO食の摂取はパフォーマンスに有益である。
エクササイズ開始60分以内の摂取はパフォーマンスが改善することはあっても、ネガティブな影響はみられない。
Vitargoや UCANといった加工炭水化物の効果は、炭水化物の加工方法に左右される。
急速な消化吸収を目的とする加工炭水化物は急速なグリコーゲン再合成を誘発し、反復運動におけるパフォーマンスに影響しやすい。

逆に緩慢な消化吸収を目的として加工された炭水化物は、 high-GI CHOに比べエクササイズ時の脂質酸化を増加させ、筋グリコーゲンの維持に役立つ。しかし、顕著なパフォーマンスの向上は見られない。

高脂肪食の摂取はパフォーマンスへの効果は不明瞭なものの、その後のエクササイズ時の脂質酸化を増大させる。多くの研究では、高脂肪食の摂取はCHO食に比べて特に意味がないもしくはパフォーマンスにネガティブな影響を与えるとしている。

エクササイズ前のCHO-PRO食の摂取がパフォーマンスに与える影響に関するデータはごくわずかであるが、グリコーゲン貯蔵の増加やエクササイズ時の代謝の上昇を示すいくつかのデータがある。

トレーニング条件や遺伝子の影響もあるが、カフェインとビートの根のジュースはパフォーマンスを向上させた。

出典
Nutrients. 2014 May; 6(5): 1782–1808.

トレーニング前中後でどのような栄養を摂取すればいいのか、示唆に富むデータだと思います。

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